No.151  エマーソン弦楽四重奏団のこと(その1)
 
 
 5月30日のエマーソン弦楽四重奏団(ESQ)のコンサートは、今年のカルテットのコンサートのベスト3には入るのではと思う。’76年結成後すぐに2人のメンバーが交代したが、20年、現在のメンバーで仲良くやっている。4人とも音楽もすばらしいが人柄も最高だ。
 チェロのデイヴィット・フィンケルは、ピアニストのウー・ハン(彼の愛妻)と新しいレーベルを設立し、自分たちの納得のいくやり方でCDを録音し、リリースしている。ソニーのノート型パソコンを常に持ち歩き、E-Mailなどでファンとも積極的にコミュニケートしている。他の3人にもノートパソコンを持たせ、ビジネスでもリーダー的なところを見せる。とても気さくで、彼ほどシンプルなサインをする人はいないと思う。
 彼の5歳の娘はヴァイオリンを習っていて、先日、宮崎のホテル滞在中にアイザック・スターンに見てもらったんだと、嬉しそうにデジタルカメラで撮った写真を見せてくれた。
 デイヴィットはこんな話をしてくれた。「今日のコンサート(藤沢リラホール)で、身を乗り出して真剣に聴いてくれた青年がいた。とても嬉しかった。前の方(の席)でそういう姿があると、他のお客さんにそれが伝わるんだよ。マールボロ音楽祭ってあるでしょう。主宰していたパブロ・カザルスは、自分がステージに出ないときには必ず客席の一番前の中央に座って、こうやって(あごに手をあてる仕草をして)じっと聴いていたんだ。何が起きたと思う?…1年後、カザルスは亡くなっていたけど、聴衆が変わったんだ。皆、カザルスのように真剣に聴いてくれているわけ。こうやって、ホールのお客さんの姿勢が変わると、ステージにもそれがすぐに伝わってくるんだ。今日(5月30日)はとても嬉しい1日だったよ。」
                             (1999年6月5日 ようよう ま 記)