2022年の公演スケジュールを更新しました

●ま の雑記帳 11/6 北村 陽&岡原 慎也 デュオ・コンサート

出演者プロフィール

北村 陽(きたむら・よう)(チェロ)

2004年生まれ。2017年、第10回若い音楽家のためのチャイコフスキー国際コンクールに全会一致で優勝。翌年、チャイコフスキー国際青少年フェスティバル(ロシア)に招待される。
9歳でオーケストラと初共演、10歳で初リサイタルを行う。これまでに、読売日本交響楽団、東京交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団、兵庫芸術文化センター管弦楽団、群馬交響楽団、山形交響楽団、中部フィルハーモニー交響楽団に招かれ、小林研一郎、井上道義、大友直人、藤岡幸夫、小林資典ら各氏と共演。テレビ朝日「題名のない音楽会」BSテレ東「エンター・ザ・ミュージック」NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」「ブラボー!オーケストラ」などに出演。W.ベッチャー、P.ミュレール、M.マイスキー、M.ブルネロ、J=P.マインツら各氏のマスタークラスを受講。堤剛、山崎伸子、太田真実、故ギア・ケオシヴィリ各氏に師事。2021年 霧島国際音楽祭賞受賞。
現在、特待生として桐朋女子高等学校音楽科(男女共学)2年に在籍。使用楽器は、上野製薬株式会社より貸与されている1668年製「カッシーニ」。

 

岡原 慎也(おかはら・しんや)(ピアノ)

東京芸術大学在学中より演奏活動を始める。同大学卒業後、ベルリン芸術大学、ミュンヘン音楽大学マスタークラスにおいて研鑽を積み、FM放送に出演等、ドイツ各地で演奏をする。帰国後、ベートーベンのピアノソナタ全曲演奏や各地でのリサイタル、コンチェルト等で好評を博す一方、シューベルトやヴォルフの歌曲の全曲演奏など、ドイツ歌曲や室内楽のパートナーとしても精力的な活動を展開し、ヘルマン・プライ、テオ・アダム、ディートリヒ・ヘンシェル、シュテファン・ゲンツなどと共演を果たし、NHK芸術劇場で放映される。ウィーン・フィルの主力メンバーからなるシュトイデ・カルテット、マルティヌー・カルテットなど、国内外で共演を重ねる海外アーティストも多い。また、チェスキー・クルムロフ音楽祭、リヒャルト・シュトラウス音楽祭、そしてグラン・カナリア音楽祭などに招待され、ソリスト、歌曲のパートナー、室内楽奏者として幅広く活動している。 1993年京都音楽賞、96年大阪文化祭賞本賞、そして2001年には音楽クリティッククラブ賞、2012年には第66回文化庁芸術祭優秀賞を受賞。これまでに20枚以上のCDがリリースされている。現在、大阪音楽大学大学院研究科長。日本ドイツリート協会会長。

 

演奏曲目について

ロベルト・シューマン(1810-1856):アダージョとアレグロ 変イ長調 Op.70

シューマンが1849年に書いた曲。オリジナルはホルンとピアノのための作品だが、ホルンの代わりに、独奏楽器がヴァイオリンあるいはチェロに置き換えられて演奏されることも多い。前半のロマンティックなアダージョが終わり、後半のアレグロに入った瞬間、ジェットコースターで滑り落ちていくかのような感覚になるのは私だけかな。

 

黛 敏郎(まゆずみ・としろう)(1929-1997):BUNRAKU

先日の都内の演奏会で北村陽さんは、プログラムにこんなふうに書いている。「BUNRAKUは、文楽(人形浄瑠璃)の太夫の七変化する声色や、太棹三味線の重厚な低音、人間のように振る舞う人形の動きや感情を、チェロ一本で見事に表現しているとても面白い曲です」。

 

フランツ・シューベルト(1797-1828):即興曲集 D899より

第2番 変ホ長調 Op.90-2    第3番 変ト長調 Op.90-3

シューベルトの最晩年のピアノの代表作。即興曲は全部で8曲あり、D899(Op.90)は前半の4曲。第2番は三連符を主体にしたテーマと、舞曲風の中間部からなる曲で、人の心の中にある様々な風景を歌った切なさを感じさせる作品。第3番は美しい歌に満ちた、優雅なメロディが印象的な作品。

 

ヨハネス・ブラームス(1833-1897):チェロ・ソナタ 第1番 ホ短調 Op.38

1865年の夏、故郷ハンブルクから音楽の都ウィーンに移り住んだ頃完成した。全3楽章から成る味わい深い作品。終楽章の充実ぶりには圧倒される。

 

北村 陽さんのこと

プロフィールやインタヴュー記事でご紹介していない北村陽さんことを少し記しておきたい。◆2004年生まれの高校2年生、北村陽さんは、3歳のとき、映画『ファンタジア2000』の中で演奏されている「魔法使いの弟子」(デュカス作曲)でのファゴットのメロディに魅せられ、ファゴットを習いたいと言った。しかし、残念ながら3歳の男の子にはファゴットは大きすぎた。次に、ある演奏会で、楽器本体をくるくる回すコントラバス奏者が楽しそうでやりたいと言ったが、これも叶わず。その後、音楽図鑑を見て、ファゴットと同じような音域で、コントラバスと同じような形をしているところから、チェロが候補に挙がってきたのである。陽さんは、半年間、段ボールで作った「チェロ」を「弾き」ながら鼻歌で練習をした。楽器への思いが中途半端ではなかったことがよく伝わってくるエピソードである。4歳7か月のとき、ついに8分の1サイズのチェロが届き、念願のチェロとの日々が始まった。◆陽さんの成長は著しく、第10回大阪国際音楽コンクール、第14回泉の森ジュニアチェロコンクールなどで優勝。そして、2017年6月、13歳のとき、カザフスタンで開催された「第10回 若い音楽家のためのチャイコフスキー国際コンクール」でも優勝を飾り、大きな話題を集めることとなった。このコンクールは、1992年、チャイコフスキー国際コンクールのジュニア部門として創設され、8歳以上17歳以下を対象として行われているという。◆北村陽さんに出会ったのはもう10年以上前ではないかと思う。その演奏を初めて聴いたとき、私は度肝を抜かれた。最近はテクニックがしっかりしている子どもは少なくないので、そのことにはあまり驚かなかったのだが、彼のチェロを奏でる音楽が聴き手に心地よく響いてくるのだ。陽さんが心から楽しそうに音楽に向き合っているのは、弾いているときの表情から明らかだが、まだ小学生であるにもかかわらず、その音楽が実に豊かであり、私の心にしみてくることに感動した。「北村陽からは目が離せない!」そう思い、以来私は、できる限り彼の演奏を聴き続けてきた。現在高校2年生の陽さん。以前から「自分にしかない音を持っているチェリストになりたい」と話す。実際、すでにその片鱗はうかがえるが、今後陽さんがどのように成長していくか、心から見守り、応援していきたいと思う。◆本日は、北村陽さんが演奏家として人生を歩んでいくことに対して背中を押したという、岡原慎也さんがピアノを受け持つ。陽さんにとっては偉大な恩師ということになる。それでも、先日陽さんからリハーサルしたときのことを聴く限り、偉大な恩師が共演者であっても、けっして萎縮したり遠慮したりせず、むしろ自分の音楽づくりのために力を引き出してもらいながら、より豊かな演奏ができるのではないかと期待させてくれた。2人の共演は初めてとのこと。記念すべき公演である。楽しみに開演を待ちたい。(小島昭彦)

 

ま の独占インタヴュー 

10月下旬、出演するお二人にメールによるインタヴューを行った。ききての質問に、お二人とも快く、誠実に回答くださった。

~北村 陽 さんにきく~

北村さんは、いまこうして演奏家をめざし日々精進されているわけですが、この道を選ぶにあたって迷いはありましたか。

北村(以下YK):子どもの頃から、ずっと自分にしかない音を持つチェリストになりたいという夢を持って音楽をやってきました。2015年にヨーヨー・マさんと話すことができ、そのためにはどうしたらいいかと尋ねました。「すべての自然の営みに耳を傾けなさい。そして学び続けなさい。そうすれば自分自身にしかない音を見つけることができる」とヨーヨー・マさんは答えてくださいました。私はいつもこの言葉を胸に音楽と向き合っています。

とはいえ、現在、桐朋女子高等学校音楽科(男女共学)の2年生ですね。一般的な普通科の高校とはまったく違うと思うのですが、1日をどんなふうに過ごしているのか、簡単に教えていただけますか。

YK:授業では音楽系の科目が多く、その他の教科も、先生方は音楽家として生きていくときに必要になる事を取り入れて教えてくださいます。休み時間や放課後には、高校、大学の垣根を越えてアンサンブルをしたり、友達と一緒に音楽を聴いたりしています。周りでは朝の5時から学校のレッスン室で練習する人もいて、自分も頑張らないと!と思いますが、つい、私は朝が苦手なので、本番前にならないとなかなか朝練はできません。それでも5時からというのは難しいです。

高校の授業で「音楽」が占める割合はどれくらいですか。

YK:半分くらいです。

高校の「音楽」系では、北村さんの得意な科目と不得意な科目は何でしょうか。

YK:ソルフェージュが音楽を聴きとる耳のトレーニングや、楽譜を理解するためにとても重要な授業で、様々な作品の解釈が深まるので楽しいです。その中のピアノを弾きながら歌う「弾き歌い」だけはあまり得意ではありません。小さい頃は、歌うことが大好きだったのですが、声変わりをしてから、歌える音域が変わってしまいました。

チェロを学んでいて楽しいと思う点と、難しいと思う点を教えていただけますか。

YK:チェロは自分の思いを自由に表現できて、音楽で人とコミュニケーションを取ることができるので、とても楽しいです。難しいことは、今だと、体の成長に伴って演奏する姿勢を変えていかないといけないことです。また、チェロは持ち運びが大変です。美味しそうなお店があっても、狭いお店には入れませんし、飛行機では、チェロのために一席取らなければいけません。

この先取り組んでみたい作曲家、あるいは作品はありますか。

YK:近現代の作曲家の作品に取り組んでみたいです。授業で20世紀以降の作曲家について学んでいて、音楽の様式の変化や、作曲家同士がどう影響を与え合っているかなどを知って興味がわきました。最近いろいろなコンサートでも取り上げられることが増えてきていると思うので、自分も取り組んでみたいです。

普段よくお聴きになる音楽はなんですか。

YK:主にクラシックですが、ポップスなどの流行っている曲を聴くこともあります。クラシックで最近聴き始めたのは、 自分が演奏する曲の作曲家が作った歌曲です。

(ご自身の「先生」を除いて)お好きな演奏家は誰でしょうか。また、どんなところに惹かれますか。

YK:ヨーヨー・マさんです。ヨーヨー・マさんの音楽は生きています。彼は、常に新しいものを生み出そうとしていて、 とても尊敬しています。

音楽をするうえで、最も大切にしていることはどんなことですか。

YK:作曲家と作品に真摯に向き合うこと。音楽を聴いてくださる方と分かち合うこと。人の心に寄り添うような演奏をしたいと思っています。

クラシック音楽以外で関心の高いことは?

YK:空を見る事が好きです。

もし演奏家を目指していなければ、どんな仕事に就きたいと思っていましたか。

YK:気象予報士です。空に浮かぶ雲は、一瞬たりとも同じものはなく、音楽と同じように刻一刻と変化し、その場で消えていってしまいます。光や色や形、空は様々な顔をして私の心に語りかけてきます。そんな空がこの後どんな表情を見せるか、気象予報士になれば知ることができると思っていました。

演奏会本番前に、験(げん)を担(かつ)いで何かこだわるようなことはありますか。

YK:そういったことは何も決めていません。

岡原さんとの共演がついに実現しますが、どんなお気持ちですか。また、岡原さんとどのような演奏ができるとよいと思っていますか。

YK:岡原先生と共演できることは、本当に夢のようです。先生は私のどんな思いも受け止めてくださると思いますし、先生と演奏することは、とても沢山のことを学ぶことができるので、先生と共演後に、自分の演奏がどうなっていくのか楽しみです。

藤沢公演にご来場の皆様にひとこといただけますでしょうか。

YK:コロナ禍で、音楽を聴くのも演奏するのも制限が多いですが、演奏では、心を開いて、お客様と繋がりたいと 思っています。皆様に楽しんでいただけると嬉しいです。

どうもありがとうございました。当日を楽しみにしています。

 

~岡原 慎也 さんにきく~

岡原さんといいますと、私たち音楽ファンの間では、ベートーヴェンやシューベルトのピアノ作品や、世界的な歌手との共演による数々の歌曲が真っ先に頭に浮かびます。今回の演奏会でも、ソロでは、シューベルトの即興曲より2曲聴かせてくださるわけですが、岡原さんのシューベルトに対する思いについておきかせいただけますか。

岡原(以下 SO):実は、私は高校生まで「ショパン少年」でした。それが大学1年生の時に、当時ドイツの歌劇場から帰国された原田茂生先生にドイツリートの世界に誘われ、その年には『冬の旅』を彼と松江市で演奏しました。そこからシューベルトの音楽の世界に引き込まれ、彼の死生観、穏やかな語り口に惹かれるようになったのです。

岡原さんが音楽に関わる上で日頃から大切にされていることはどんなことでしょうか。

SO:大学の教授をやっている関係で、演奏だけに集中するという環境ではありません。心掛けているのは、気持ちの切り替えを早くすることです。それから、なるべく自然を感じられる、四季の移り変わりを体感できる環境に自分を置くようにしています。

今回は北村陽さんとのデュオですね。実は、岡原さんは北村さんを幼少の頃からご存じで、北村さんが演奏家の道に進むかどうか迷っていたときに、背中を押されたと伺っています。岡原さんには、当時の北村さんはどのように映っていたのでしょうか。あるいは、演奏家の道に進むべきと、どこでそう思われたのでしょうか。

SO:最初に陽君の演奏を聞いたのは、多分彼が小学1年生か2年生の時でした。当時はお母様がピアノを弾いていらして、「一度聞いて欲しい」と言われたのです。聴いて数十秒で私は陽君の非凡な才能を感じ、「この子は特別だから、大切に育ててください、必ず素晴らしい演奏家になります」とお伝えしました。何より、幼いながら音楽で語ることができていたからです。以後の彼の活躍は皆さんご存知の通りです。

北村陽さんとの共演は初めてだそうですね。北村さんとの共演で楽しみにしていることはありますか。

SO:アンサンブルは音を使った対話です。そして、陽君は音でしゃべれる人です。どんな会話ができるのか、とても 楽しみです。

岡原さんは大学等で後進の指導にも積極的にあたられていますが、若い音楽家にはどんなことを望まれますか。

SO:いつも学生に言っているのは、好奇心を持ってどんどん新しい世界に飛び込んでいきなさい、ということです。去年からコロナ禍となり、気軽に海外にも行けない状態が続いていますが、モチベーションを失わずにチャレンジをして欲しいと思っています。

たとえば、演奏技術は持っているものの、肝腎の「豊かな音楽性」が伴わない音大生が少なくない、と嘆く演奏家がよくいますのでお尋ねしました。いわゆるよい音楽を聴かず、感性が乏しい学生も少なくない気がするのです。

SO:インターネットが普及し、音源などバーチャルな音、交友関係、バーチャルな体験が当然な世界になりました。しかし、バーチャルの世界は実感が伴わず、人間としても、また感性も成長することはできません。しかし、人間は心なくして生きていけないので、将来また心の時代がやってくると信じています。

岡原さんは、普段どのような音楽をお聴きになっていますか。

SO:実はジャズをよく聴いています。意外に思われるかもしれませんが、学生時代はよくジャズ喫茶に通っていまし た。オスカー・ピーターソンは天才だと思います。

いま最も関心の高い作曲家は誰でしょうか。

SO:ピアノ曲はあまりありませんが、ドヴォルジャークは好きです。特に弦楽セレナーデや交響曲の8番は大好きです。一時期チェコのマルティヌー弦楽四重奏団とよく共演していましたが、メンバーから「お前はチェコ人ではないのか?」とよく言われました。ちなみにシューベルトの先祖も、現在のチェコ・ボヘミア出身です。

もし音楽家になっていなかったら、どんな職業に就かれていたと思いますか。

SO:探検家かカーレーサーだと思います。今だにラリーを見ると血が騒ぎます。

演奏会本番前に、何か験(げん)を担ぐことはありますか。

SO:残念ながら何もこだわりはありません。

岡原さんにはこれからも様々な場でご活躍されることと楽しみにしていますが、今後ご自身で取り組んでみたいことはどのようなことでしょうか。

SO:2年前にベートーヴェンの「第九」を指揮しました。初めてにしては上出来だったと思います。機会があればオー ケストラの指揮も続けたいと思います。

藤沢公演にご来場の皆様にひとこといただけますでしょうか。

SO:コロナ禍により、この1年半は音楽好きの皆さんもさぞ窮屈な思いをされたことと思います。このようなことがあると音楽はすぐ「不要不急」と言われますが、人間に心がある限り、音楽がなくなることはありません。陽君と音で対話する様子を楽しんでいただければ幸いです。

どうもありがとうございました。当日お目にかかれるのを楽しみにしています。

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